最近ちょっとデジカメネタが続いているのは、いい加減写真が撮りに行きたくて爆発しそうだからかもしれませんが、今週末は、横浜で「CP+」という写真と映像のイベントが行われていて、それに行きたかったのに行けなかったことも影響しています。
そんな今日お送りするネタは、「中判デジタルカメラ」に関するお話です。
中判サイズのデジカメが増えてきた
先日別記事ですこーしだけセンサーサイズの話と合わせて、中判デジタルカメラ(以下中判デジカメ)のセンサーサイズを紹介しました。
この中で、左から2番目の44 x 33mmというのが、今回紹介する3つの中判デジカメに搭載されているセンサーサイズなのですが、多くのハイアマやプロがスタンダードとしている「35mmフルサイズ」(右から2番目、以下フルサイズ)より面積比で約1.7倍大きいセンサーです。
面積が大きい方がより良い画像を得られる可能性が高いのは論理上間違いないことですが、センサーサイズが大きくなると、カメラ本体が大きく、重くなるというデメリットがあるのも事実。また、センサーが大きいとカメラ自体の値段も高くなってしまうため、ちょうどいい落とし所として、フルサイズがここまで指示されてきました。
ただ、大きくて重くて、高いものの、コマーシャルフォト、つまり雑誌用の写真とか、看板広告なんかに使うような写真を撮るカメラとして中判デジカメは長く存在していて、全くなかった訳じゃあありません。
300万円とか、値段が高すぎるので一般人には関係ない世界の道具でもありましたが、2010年にPENTAXが100万円を切る価格で「645D」を投入したあたりから中判デジカメが一般層の世界に降りてきました。
価格破壊と高画質でカメラオブザイヤーもとった「645D」
雲の上の存在だった中判デジカメが、「もしかしたら買えるかも」、という価格帯で登場し、その後アップデートされた「645Z」も含めフルサイズから中判へ、という微かな波が起こり始めていました。
富士が”ミラーレス中判”、「GFX50S」で参入
そんな感じでPENTAXが独壇場状態を作りかけていた低価格中判デジカメですが、富士フイルムが「GFX50S」で殴り込んできました。
645Zと違い、ミラーレスタイプでの登場でこれまでの「大きくて、重い」という中判デジカメの常識が覆りました。
価格も645Zより少し安く、圧倒的に薄いGFX50Sは、多くの「645いいなー、でもでかいし、、、」と思っていた層を誘惑しまくっています。
ハッセルブラッドもミラーレスを投入
それだけではありません。
先ほど書いた、コマーシャルフォト用中判デジカメメーカーとしては大きな存在である、スウェーデンのハッセルブラッド(HASSELBLAD)もミラーレスタイプの中判デジカメを昨年投入済み。
スウェーデンらしいユニークなデザインが特徴
いやほんと、戦争です。
こちらの「X1D」のお値段、ボディのみで111万円と少し値段帯はあがりますが、それでもこれまで200万を余裕で超えていたハッセルブラッドが実勢価格で100万円を切ってきたのは大ニュースです。
フルサイズでは物足りない、もっと上に行きたい、けど、上が上すぎた時代から、100万前後というゾーンに舞い降りた二つのミラーレス中判デジカメが業界に嵐を起こしています。
3モデルを比較しよう
では、さて。
こうなってくると気になるのが、ミラーレス化はどれくらいサイズに影響があるのか、ですよ。
体にはなりますがサイズを合わせて並べてみて、大まかな差を画像でチェックしてみましょうか。
左から、フジ「GFX50S」、Hasselblad「X1D」、PENTAX「645Z」。
645Zのみ、ミラーがあるので、センサーが見えていない状態ですが、どれも同サイズのセンサーが積まれています。
正面からの印象はX1Dが一番小さく見えますが、GFX50SはEVFが外れるので、外すと上がすっきりし、X1Dと近い感じになります。
背面。
液晶は、X1Dだけ3.0インチで、後の二つは3.2インチです。
ただ、GFX50Sは236万ドット、645Zは103.7万ドットなので、サイズ自体は同じながら、GFX50Sが倍以上細かい液晶となっています。
上から見た図。
サイズ感が一番出るのがこの上からショットですね。
X1Dの異常な薄さが目立ちますが、やっぱりミラーレスは薄い。
645Zのフランジバック部分がそのまま削り取られたようなX1Dのサイズ感にミラーレス化の恩恵を感じずにいられません。
デザイン的にも、クラシック感のあるGFX50Sや今のデジイチらしいデザインの645Zと比べて、X1Dは先進的なスタイルで、オシャレ感やばいです。
有効画素数はどれも5000万画素ちょっととほぼ同じで、論理的に言えば、同じレンズをつけたらどれも似たような写真が撮れるはずですが、見た目のコンパクトさに加え、重さも違ってきます。
GFX50Sは850g、X1Dが725g、そして645Zは1550gとやっぱり1機種だけ他の倍の重さになってしまいます。(バッテリーこみ重量)
これを見ると、645Zがとっても不利に見えてしまいますね。
645Z終了?
では、じゃあ、645Z終了のお知らせなのか?ですよね。
こればっかりは、PENTAXユーザー歴10年を超えるボクでも難しいところです。正直。
645Z/Dはレンズマウントが、フルサイズ機の「K-1」やボクも使っているAPS-C機の「K-3」が採用するKマウントとは違うので、これらのユーザーでもレンズの流用はできません。
つまり、K-1ユーザーやボクが645Zを買うとしても、レンズも一から揃え直す形になり、それなら、GFX50Sを買っても違いはありません。
ただ、一部の周辺機器(フラッシュやリモコンなど)が共有できることと、操作性が近いこと、メーカーとしての姿勢に共感するとか単純にPENTAX愛があるなどの理由で645Z/Dを選ぶというのはありです。
しかし、これらの理由はサイズ、重量のマイナス面をカバーするほど強いかというと、、、正直多くのPENTAXIANたちが「ペンタもミラーレスはよ」と思っていると思うくらい、ミラーレスとの差が大きいと言わざるを得ません。
ミラーありの恩恵として、光学ビューファインダーの搭載によりミラーレスでは得られない撮影というのは確かにありますが、それでもやっぱり、、、うん。
使い方、撮り方で住み分け?
中判デジカメデビューに向けて、仮にこの3モデルを並べたなら、「どんなスタイルで撮るか」という点で選ぶことになるでしょう。
645Zを選ぶ人は…
645Zは何と言ってもOVF(光学式ファインダー)がメリット。
のぞいて、みたままの世界が撮りたい人はこれしかありません。
また、本体がでかいことは、被写体が人だった場合の威圧感があり、モデルさんが「すげぇカメラで撮られている」という意識をするので、そういう意味で効果があるかもしれません。
あとは、、、PENTAXが大好きな人が買うカメラですね。
X1Dを選ぶ人は…
このカメラ、形、デザインもオシャレですし、ボタンがカメラらしからぬ少なさで、液晶はタッチ対応と、大きなスマホっぽいんです。
本体も小さく、軽いので、「おしゃれにスマートに」撮りたい人はいいかも。
北欧デザインのカメラはファッションの一部にもなるかもしれませんので、”おしゃれフォトグラファー”にいいかもしれません。
GFX50Sを選ぶ人は…
こいつは、クラシックカメラ調デザインで、ボタンの感じも同じな部分も多く、「ザ・カメラ」というカメラになっています。
富士のAPS-Cミラーレスも同じ路線ですが、これを選ぶ人は、「撮ってる」、「写真撮ってるヨォ」という気持ちを高く持って中判撮影を楽しみたい人向けかもしれません。
まとめ
- 中判デジカメは100万以下で(本体なら)買える時代!
- ミラーレスタイプはサイズも現実的になってきた!
- OVFタイプの645Zは不利ながらもOVFの魅力はある
- X1Dはおしゃれさがポイント
- GFX50Sは「ザ・カメラ」
多くの人はおそらく、GFX50Sが大本命と思います。
それは、カメラとしての総合点がバランスよく、多くの人が「現実的に使える」と思えるところに落とし込んできたからです。
645Zもすっごい魅力的で、ボクもいつか欲しいと思ってきたカメラでしたが、ミラーレス機が出てきた今、OVFの恩恵を捨ててでもあのサイズ感、重さから解き放たれるなら、ミラーレスにしたいという気持ちになってしまっています。
車も最近はTESLAの台頭により電気自動車(EV)が増えてきていますが、エコだったり、静かだったりする反面、エンジンのあの音を楽しんだり、振動からくる「車感」がもう楽しめないというところ、そしてガソリンの様に燃料補給がすぐできないなどのネガティブ要素がありますよね。でも、2025年くらいには半分以上の新車はきっとEVに変わっているでしょう。ガソリンがなくなっていくからです。
OVFは写真を撮る上でボクにはすっごく重要な要素で、ファインダーを覗いて撮ることこそが「写真」だとさえ思っていますが、OVFは機構の開発やパーツに費用がかさむ上、サイズを抑えられない限界があり、今後ミラーレスの波は止まらないでしょう。
いつか、車からエンジンが消える、いつか、カメラからOVFが消える。
これは避けられない未来だと最近思うのです。
ならば、いち早くミラーレスデビューし、ミラーレスでいい写真を撮るという方向へ舵を切るのも英断かな、と。
そもそも中判デジカメの世界はまだまだ成熟期で、今後の進化待ちの部分も多いものですが、GFX50Sの登場は戦争の始まりであり、革命の始まりだと思っています。
今後も中判デジカメに大注目したいと思います!